墓穴は深く果てしなく。




東方司令部、書庫室にて。
新しく入った文献に読み耽るエドワードが、ふと顔にかかる煙に顔をあげると、
いつのまに入ってきていたのかハボックがいた。

「悪い。煙かったか?」

少尉はタバコをくわえて窓の外を見ていたが、エドの視線に気付いて振り向いた。

「いや、平気だけど…、なんでここにいるんだ少尉。仕事中だろ?」

訊ねると、いつもの笑みを浮かべて答えてくる。

「たまには息抜きも必要だろ?」

「つまりサボリってことだよな」

にべもなく言って、
用があってここにいるわけではなさそうなハボックから読みかけの文献に視線を戻すが、少尉はヒマなのか、話かけてきた。

「そういえば弟のほうはどこへ行ったんだ?」

「アルなら中尉に連れてかれた。
なんか荷物運ぶのを手伝って欲しいって」

「へぇー。
そういやなんかでかい荷物が届いてたなぁ…」

興味なさそうに再び文献に戻そうとしていたエドがぴたりと止まる。


「…それはオレは小さいから役たたずってことか?」

キッと顔をあげてハボックを睨む。

「誰もそんなこと言ってないって大将。
荷物がでかいから大将にはちょっと持てないかもなんて誰も!」


フォローと言うより、ただの墓穴である。


立ち上がるエド。

後退りながら慌ててさらに言い募るハボック。

「だから、大将が小さいだなんて一言もいってないだろうっ!」



……。



穴の底にさらに穴を掘っている。



「誰がちっさいかーっ!!!」



エドがぶちきれた。こうなると手が付けられない。
大暴走である。


ハボックは必死で逃げ回っていたが、ふと気付く。


──いつもより手加減して暴れている?
どうやらここにある文献に気を配る余裕はあるようである。


それならと、
わざと重要な本の並ぶ本棚の近くに逃げ、
一瞬動きの止まったエドを本棚に押しつけて捕まえる。


「離しやがれっ!」

まだ怒りが治まらないらしくエドはじたばたと暴れる。

うるさいし、
黙らせるっていったらやっぱこれかねー。
そんなことを考えつつ、
ハボックはさらに怒鳴るために開いたエドの口を自らの唇で塞いだ。






どこかで、ドサドサっと本が落ちる音がした。







始めはなんとか逃れようと暴れていたエドだが、
大暴れをした直後に口を塞がれては酸欠になって当たり前である。
おまけにハボックの舌はしつこくて離してくれない。


エドの膝の力が抜けて、
ずるっと座り込む。


「落ち着いたか?」

しれっとした顔をして聞いてくるハボックを睨み付ける。

なにしやがるっ!
そう怒鳴ろうとしたエドのセリフは「なっ…」くらいまでしか聞き取れなかった。
代わりにドアのほうから、


「「なにしてるんだ(です)ハボック少尉っ!!」」


という合唱が響いた。
ハボックが恐る恐る振り替える…と、
そこには怒り心頭という顔をしたロイ・マスタング大佐と、
アルフォンス・エルリックが立っていた。


彼らの足元に本が散らばっているということは
さっきのドサドサという音は……




ただの冗談だったのに、それを一番見られてはまずい人物たちに見られていたことに気付き、ハボックは死を覚悟した。







終わる?



















「私の鋼のに何をしているんだハボック!!」

「ちょっとまってください大佐!誰がアナタのですか!?」

「誰って、鋼のに決まっているだろう」

「なに馬鹿なこと言ってるんですか!!兄さんは僕のです!!」

「君こそ馬鹿なことを言っているんじゃない。君と鋼のは兄弟だろう!?」

「だからなんだって言うんです!!」

「……!!」

「……!!」

「…!?」

「……!!」













矛先が変わってほっと胸を撫で下ろし、
ハボックは隣のエドに尋ねる。

「なぁ大将、コレいつまで続くと思う?」

「さぁ?…でも少尉、今のうちに逃げとかない?」

二人の激しさにすっかり興を削がれたエドはそう応えた。

「そうだな…」



















「大体大佐は…ってアレ?兄さんは?」

「ハボックもいないな…」

「……。」

「……。」



いつのまにか書庫室に置いてけぼりを食らっていることに二人が気づいたのは、
エドとハボックがこっそり抜けだしてからかなりの時間がたってからだった。





終わり






タイトルは意味ないです。  
思いつかなかったのでとりあえずつけておいたものがそのまま…。  
ハボエドというよりはおにいちゃんと弟みたいな関係希望。  
大佐とアルはエドを愛してますが、ハボックは可愛いと思っている程度。  
今後どうなるのかはわかりませんが。  


サイト移転に伴い、改題。  
2004/7/17