ずるい2








はぁぁぁー。
東方司令部、執務室。
深いため息をつく男ジャン・ハボック。
階級は少尉だ。

ため息の原因は視界の端。
来客用のソファでケーキをパクつく自分のかわいいコイビトと、
休憩中だからといって、
その自分のコイビトの正面に座りニコニコと笑う上官にあった。


その二人の会話が漏れ聞こえてくる。

「だいたいずるいと思わないかね?」

  ずるいのはアンタだアンタ。
  人が仕事から手が放せないのを良いことにエドを独り占めしてるくせに、
  他の何がずるいって言うんスか。

心の中で毒づく。
が、そなハボックの心境を知ってか知らずか、
普段、大佐につれない態度をとっているエドが、
――今回大佐が餌付けに成功しているため、
比較的友好的に次の言葉をうながしている。

「なにが?」

「私とハボックを比べたら、私のほうが顔も地位も財産もあるんだ。

  悪かったですね。
  顔も地位も財産もアナタより下で。

「なのになぜ、君はハボックの方がいいと言うのかね?」

  ……。

「……。なぜって言われてもなぁ」

  その話はオレも是非聞きたい。

「別にオレは顔や地位や財産で
少尉を好きになったわけじゃないからなぁ」

  じゃあ…

「じゃあ何がよくて好きになったんだ?」

  ナイスだ大佐。

「……内緒」

  えぇー。

こちらから顔は見えないが、
心なしか耳を赤く染めて顔を逸らすエドに大佐は何を思ったかアホなことを聞いている。

「ここでは言えないようなところが?
ソレも私のほうが勝っていると思うんだが…」

  何言いだすんすか大佐。
  っていうかアンタ、オレの見たことあるんですか?

「ソレって何のことだかわかんないけどさ、
勝つとか負けるとかどうでもいいし」

  で?

「どこがいいんだ?」
「だから内緒だって!」

  なぜ?

「大佐に教える義理はないだろ」

  そりゃそうだ。
  …あとで聞こう。

「ほぅ。その発言は正しくないな。
誰のおかげで今の君があると?」

  うわぁ、横暴だな。

「なんだよそれは!関係ないだろ」
「関係ない…。そうか」

  ん?

「……」
「……」

  ……。



「…これでもしゃべらないつもりかね、鋼の」
「…あ!……やっ、………やめろっ!……大佐ぁ」




  はいぃーっっっ!?


どんがらがっしゃーん
っと派手な音を立ててイスから転げ落ちた。


  あんの無能大佐!
  エドになにしやがったっ!!?

「…おいしいよ、鋼の。」
「……っ」

  なにがっっっ!?

こけたせいで視界には二人がうつらない。
立ち上がろうとしていると、
肩にぽんっと手の感触。
振り返ると、
視線をあわせるためにわざわざしゃがんでいる中尉と目が合った。
「中尉?」
「少尉、休憩にいってきたらどうかしら?」
「へ?いいんすか?」
「ええ。
だって、書類がさっきから一文字も進んでないもの」
 あ……。
「す、すんません!
もどったら真面目にやるんでっ!」



中尉の目が笑ってなかったのは気のせいな方向で、
立ち上がって二人のもとへ向かう。


「エドっ!」

慌てて呼び掛ける。


  アレ?

  ……。


真っ昼間にこんなとこでは言えないようなコトが
起こっているのを予想していたのだが、
実際は、
エドに届かないところまで皿を持ち上げてケーキを頬張る大佐(大人気ない)と、
それを必死で取り返そうとするエド(かわいいVv)が、
突然後ろから呼ばれて、
そのままの態勢で止まっていた。

「なに?どうかした、少尉」

  あー…。

「いや、今から休憩だから…」
自分の勘違いが気恥ずかしくて、ぼそぼそと言う。

「え!マジでっ!」
すっごい笑顔で聞き返された。

  うわ…たまんねぇ。

「マジマジ。だから休憩付き合えよ」
「うん!」
うれしそうに腕にぶらさがるようにくっついてくる。

  ……。


  頑張れ理性!


「じゃあ、大佐、エドつれてきますよ」

一応断ってドアに向かう。

「あ!ケーキっ!」

大佐と聞いて思い出したと言うように振り返るエド。

「あー。大佐に食われたのか。
帰りに新しいの買ってやるよ」

「やったぁvV少尉ダイスキっ!」

笑顔で腕にきゅっと抱きつく様がたまらない。

  そんなかわいいこと言いながらかわいいことするのは反則だぞエド。



  耐えるんだ理性!




ドアがパタンと閉じられ、静寂が訪れた。

……。

……。

「…大佐?」

「……」

先程エドがハボックを笑顔で振り返ったときから、
微動だにしないロイに中尉が遠慮がちに声をかける。

が、反応はない。

  ……。

中尉は心配になってもう一度呼び掛ける。

「たい…




「ずるいぞ!ハボックっ!!」




「なぜ鋼のは、あの笑顔を私に向けてくれないんだ」




  ……まぁ今回は大佐、ちょっとかわいそうかもしれませんね。
  でも…。
「大佐。
大佐の休憩は終わりです。仕事に戻っていただけますか?」









  やっぱりずるいぞ!ハボックっ!














終わる。




無駄に長くなりました。  
オマケに大佐が何をしたかったのかが、  
よくわかりません。  
エドにかまいたかっただけなんでしょうかね?(聞くな)  
続きをリクエストしてくださった、  
沙雨さま、真菰、ありがとうございました。  
こんなのができました。  


 いい加減もう少し気のきいたタイトルがつけられないものか…  
2004/7/17