15.冬









その日はこの冬一番の大雪だった。







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空腹と寒さでもう動けない。

つい先日、主人が死んだ。

主人は広い屋敷に一人では淋しいといって自分を買ったらしい。

とてもかわいがってもらっていたと思う。

どこにも行くなと口癖のように言っていた。だからいつも傍にいた。なのに自分は先にいくなんでずるいじゃないかと思った。

生まれたときから食べるものを与えられて、家の中で育てられてきた自分に外の世界で生きるすべなどない。

それでももう主人のいないあの屋敷にいることは出来なくて、主人の部屋で一人きりにたえられずに外に飛び出した。

食べ物を手に入れる方法すらわからない。そして家の外はものすごく寒かった。

なすすべもなくてふらふらと三日ばかり街の中を歩いていた。







今日は空から白いものが落ちてきた。






主人が教えてくれた『雪』というものだろう。

冷たくてなんとか逃れたかったが、それはどんどん地面にも溜まりはじめた。

もう立っていることも出来なくなって、その白い地面に座り込む。

どんどん動けなくなっていく自分を自覚した。身体の上にもどんどん白いものが覆いかぶさってくる。











もう寒さは感じない。















ふわりと身体が浮く感覚に、『お迎え』がきたのかと、自分も主人の許にいけるのかと思ったのを最後に意識を手放した。

















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イーストシティの大通り。軍服に黒いコートを着込み、街灯の下を足早に歩くのは、軍の東方司令部司令官であるロイ・マスタング大佐だ。

普段はにこやかな笑みを絶やさないその顔が今は疲労を色濃く映している。

自宅に向かい、雪の降りしきる中を歩くその心中を語るように眉間にはしっかりとした皺が刻まれている。



確かに今、この国の治安は不安定である。

しかし、このくそ寒いのになぜそんなに活動的なのかと恨めしく思うほど、ここ数日はテロだとか強盗だとか事故だとかそういったものが多かった。

事件そのものは大したこともなくすべて解決しているのだが、件数が多いということは簡単に解決しようが長引かせて解決しようが大量の事後処理が待っているということで。


つまりものすごく忙しかったのである。


司令部全体が不眠不休で動いていたが、疲労の蓄積は逆に仕事の効率を下げる。

そこで、忙しい合間をぬって、部下たちに交代で休暇をとることを促した。

すると、それならば、まずは上官から休んでいただかなければと、連日司令部に泊り込みだったロイは強制的に自宅に帰らされる羽目になった。明日は一日休みだ。

自分が休むことを考えての発言ではなかったのだが、無理やり帰らされて、一人、道を歩いていると、自分の疲労とイライラもいい加減ピークに来ていたのだと自覚する。

せっかくの休暇にもかかわらず、手ごろな女性をデートに誘うような気力も起きず、ひたすら自宅のベッドが恋しくてたまらない。



風で吹き付けてくる雪に顔をしかめる。この調子では明日にはだいぶ積もるかもしれない。

事故が増えてまた仕事が増えないことを祈りながら、大通りから自宅のある通りに向かって路地を入った。

と、街灯の下に雪に半ば埋もれるようにして金色と赤の塊を見つけた。

死んでいるのかピクリとも動かない。

このままでは幾分もしないうちに雪に埋もれきってしまう。





しかしなぜこんなところに子供が倒れているのだろうかと疑問に思ったが、それよりもまず生死の確認と生きていた場合の保護が先決だと判断してその子供に近づいた。

かろうじて上下する身体に生きていることを確認する。

と、そこで気づいた。金髪に赤いコートを羽織ったその子供はパッと見ただの子供なのだが、金の髪の間からは髪とよく似た金色の耳が生えており、コートの内側からは尻尾もはみ出していた。

人型猫…。存在を知っていてもロイも見るのは初めてでかなり驚いた。が、今はそんなことを気にしている場合ではない。

ロイはその子供を自分のコートに包み込み自宅へと急いだ。

司令部よりも自宅の方が近い。ぐったりとしているその冷え切った身体を一刻も早く温めてやらなければ。







→9.風邪








   二人の出会いです。  
雪の中に埋もれてるエドを拾う大佐が書きたかったんです。  
  9の風邪に繋がる予定です。予定は未定です。  
2004/10/23