Thanks for…『For吉野珠』
今日という日に…
「今から一週間のうちに一度司令部に来るように」
そう言われてから丁度一週間目の今日。
『なんでわざわざ出向かなきゃならないんだよ!』とか
『だいたいどんな用件なのか言わないってのはどういうことだ!』とか
ぶつぶつ文句を言いながら
(そのたびに弟に『大佐は上官なんだからしょうがないじゃない』とか
『電話では話せないような内容かもしれないじゃない』とか宥められながら)
それでもエドは東方司令部に向かって歩いている。
連絡を受けたのはイーストシティからはさして遠くない場所。
そこでの用事も粗方片付いていたにも係わらず、
期限ぎりぎりの一週間目の今日到着の電車を選んだのは、
呼び付けられたことへのたんなるハライセだ。
しかも夕方5時丁度に駅に着く列車。
「兄さん、この時間じゃ大佐も仕事終わってるんじゃないの?」
「大佐の仕事が定時で終わるわけないだろ」
「そうかなぁ…」
「そうなの。だから期限には間に合うって」
心配そうなアルに断言してエドは先にいく。
なので背後のアルのつぶやきはエドには聞き取れなかった。
「さすが大佐」
先を進んでいたエドが、立ち止まったアルを振り返える。
「どうしたアル。置いてくぞ」
「ごめん。なんでもないよ」
ガシャガシャと音をたててエドの元まで走り、並んで歩く。東方司令部はもう目前だった。
「なぁ、なんか今日、人少なくないか?」
司令部の廊下で知り合いに誰もすれ違わないのを不思議に思ってアルに尋ねる。
「そうだね。
でも定時過ぎてるんだし、しょうがないんじゃない?」
今は5時半を少し廻ったところだ。
「あ、そっか」
直接司令室まで来いと言われていたので真っすぐに目的地に向かう。
と、一つのドアの前でアルが立ち止まった。
「あ、兄さん、大佐に呼ばれてるの兄さんだけでしょ。
僕、少尉たちにあいさつしてこっちで待ってるよ」
「なんだよ付き合えよ」
不服そうに口を尖らせるエドをアルが宥める。
「でも僕は軍属じゃないんだし、話せない内容かも知れないだろ?」
「そんなんいーじゃねーか」
「よくないって。それより早く行ってきなよ。
今日中には来るはずなんだから大佐も待ってるんじゃない」
「…わかった。すぐ終わらせる」
不請不請ながらもエドは納得したようで一人で大佐の司令室に向かう。
「まったく世話のかかる…」
コンコン。
「大佐ー」
エドは形ばかりのノックをして中の返事も待たずにドアを開ける。
かなり失礼な筈だが、部屋の主は慣れているらしく、笑顔でエドを迎えた。
「遅いぞ鋼の」
「今日までに着けばいいんだろ?間に合ったじゃん」
いいながら勝手知ったるといったかんじで来客用のソファに座る。
「それはそうだがね」
「ならいーじゃねーか。それより用件は?」
「ああ、そうだったね」
そういうとロイはエドの座っているソファの前まで歩いてきて、
「誕生日おめでとう」
と言った。
「は?」
飲み込めていないエドに逆に聞き返す。
「今日は君の誕生日だろう?」
「…え?」
「なんだ忘れていたのかね?」
まだよくわからないという顔をしているエドをおもしろそうに見つめてロイが言う。
「……今日がオレの誕生日?」
「そうだよ」
笑って答える。
「………忘れてた!」
ようやっと自分の誕生日を思い出したらしいエドに思わず苦笑がもれる。
「思い出したようだね」
「もしかして用件って…」
「もちろん」
胸を張っての答えにエドは脱力を隠せない。
「なんだよそれ…。
そんなことのためにわざわざ呼び出したのかよ…」
「そうだが?」
それがどうしたとでも言いそうな雰囲気だ。
「それに、そんなことというがね…」
と前置いてロイはソファに座るエドの前にヒザをついてまっすぐに目線をあわせる。
「君がこの日に生まれてきたことを祝いたいと思うのはおかしいかい?
それに私は今日、君が生まれてきてくれたことを感謝したいんだ。
生まれてきてくれてありがとう。
今までの歳月を生きてきてくれて、
私と出会ってくれてありがとう。
ありがとう。
愛しているよ」
最初は真っすぐだったエドの視線は
台詞の途中から下をむいてしまった。
今は首まで真っ赤にしてうつむいている。
「抱き締めても?」
「……」
ロイは沈黙を肯定ととってふわりと抱き締める。
エドはされるがまま抱き締められて、
その胸に額をつけて下を向いたまま、
「ありがと…」
とつぶやいた。
「ハッピーバースデイ!」
東方司令部の一室にクラッカーの音が鳴り響く。
テーブルの上にはケーキと料理。
そして笑顔の司令部の面々とアルフォンス。
エドがびっくりして目を見開いているとうしろから大佐が
「驚いたかい?実はずっと計画していたんだよ」
と教えてくれた。
「おめでとう大将!」
「おめでとうございます」
「おめでとさん、エド」
「おめでとうエドワード君」
「おめでとう兄さん」
みんなが次々とお祝いの言葉をくれる。
それぞれに笑顔でお礼を言って、
ケーキの前に促された。
ケーキのろうそくを吹き消して、
中尉が切り分けてくれた一番大きなケーキに舌鼓を打ちながら、隣に立つアルに聞いてみた。
「もしかしてアルも一枚噛んでる?」
「うん。前に来たときに、今日兄さんをつれて来てくれって大佐に頼まれてさ」
「そうなのか。全然気付かなかった」
「そりゃ、気付かれないように頑張ったもん」
「でも、一週間以内ってオレが早く来ちゃったらどうするつもりだったんだ?」
「それは、鋼のは絶対ぎりぎりまでこないから大丈夫だって大佐が。ホントそのとおりだったね。
しかも到着時間までぴったりなんだよ、大佐の予想」
「……」
エドの行動は完全に読まれていたらしい。
少々悔しいが、
前回来たのは3ヵ月は前で、
そんな頃からわざわざ計画してくれていたのかと思うとうれしくなった。
「ありがとな」
「おら、大将!主役は真ん中だろっ」
ハボックが輪の中に引きずっていく。
君が生まれてきた
今日という日に
感謝を送ろう
終わり
☆ハッピーバースディ吉野珠☆
というわけで、珠に捧げます。
もらってやってください。
煮るなり焼くなりお好きなように。
アニメだとエドの誕生日は冬なんで、季節はずれな気もしないではないですが…。
オフィシャルで誕生日公開してないんで気にしない方向でお願いします。
因みに司令部の廊下に人がいなかった理由は、
大佐が一番におめでとうって言いたかったからです(笑)
エドが来る時間は廊下にでるな。と命令してたんです。
…そんな上司やだ。
4/5の友人の誕生日に書いたものです。
2004/7/17
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