ひまわり








司令部の中庭にひまわりが咲いている。

去年そこに花が咲いていた憶えもないし、廻りにひまわり畑があるわけでもないのに、

ただ一輪、空を、太陽を目指して真っすぐに大輪の花を咲かせている。

「ひまわりになりたい」

金色の少年が己の背丈よりも大きいその花を見つめながら呟いた。

人の身長はこんなに劇的にのびないからなと笑うと、

食って掛かってくるだろうと思って身構えていたというのに、予想に反して苦笑を返してきただけだった。

めずらしい。

「うるせー」

おや、口に出していたようだ。

大きさの話でないとすると…


ああ、そうか。

彼が見上げる花のその先にある空の一点を見上げる。

「…きみがひまわりになるというなら、私は太陽にでもなろうか」

至極真面目な声で告げてみる。

一瞬驚いたふうに見開かれたそれこそが太陽のような瞳が歪んで、皮肉めいた笑みを形づくる。

「『私だけみていて!』とかいうつもりか?」

わざわざ声色を変えて言ってくるので、

「いいや。私が太陽で君がひまわりなら、君が『アナタしか見えない!』と言ってくれるからな」

私もそれを真似て笑って返す。

「…私には今の君は充分にひまわりのように見えるよ」

言いながらひまわりに近づいて手を伸ばして花を自分に向ける。

「ほら、この花はこちらを向いて欲しくてもこうして無理やり手で押さえていないといけないんだ」

そういって手を離す。

とたんに太陽のほうを向き直るひまわり。

「ほら。君みたいだろう」

目標を見据え、決してこちらに意識を向けてくれない君みたいだろう?

「だから太陽になりたいって?」

「そう。君がこちらを向いてくれないのなら、君が見ているその先に立つしかないじゃないか」

「……あんたバカだろう?」

「ひどいな」

大真面目なのに。

「アンタがオレの太陽になることはありえないよ」

…そんなことは解りたくないほどよくわかっているんだから念を押すことないじゃないか。

「オレの太陽は大佐じゃない。でも、オレに太陽を、目標を示してくれたのは大佐だろう?」

そう言ってこちらを真っ直ぐに見つめてくる太陽の瞳に魅入られる。

「ひまわりが太陽を目指すには、水や養分が必要だろ。大佐がオレをひまわりだというのなら、オレにとって大佐はそういうものだよ」

あぁやっぱり君には敵わない。

「私は君が前を見つめるための力になれていると?」

「それじゃ不服か?」

「そんな恐れ多いことを言うわけがないだろう。君の力になれているというなら本望だよ」

「…大佐、恐れ多いって台詞似合わないのな」

言いながら満足そうな笑顔を向けてくる。

しかも先ほどの皮肉めいた笑みではなく、それこそひまわりが咲いているような大輪の笑顔。

「それは反則だよ鋼の…」

「あ?何か言ったか?」

小さく呟いたセリフは聞こえなかったらしい。

聞き返してくる笑顔にこちらも笑んでなんでもないよと返す。

気になるから話せという言葉も適当にはぐらかして、そろそろ中に戻ろうかと促した。

「もしかしてもう休憩終わってる?」

「いや、むしろ君を見つけて抜け出してきたからな。そろそろ戻らないと中尉が怖い」

「うわぁ。射殺されないといいな」

「洒落にならないからやめてくれ」

言いながら自分でもその情景がありありと浮かんできて少し血の気が引いた。

「じゃあオレもう行くわ。巻き添え喰いたくないし」

そう言って走り出した背中に声をかける。

「鋼の!今回はいつまでいるんだ?」

「今日の収穫次第!」

夏でも赤いコートの背中が振り返って応える。

「そうか。今日の夕食の予定は?」

「…おごり?」

「もちろんだとも」

「…じゃぁ6時にここの門の前な!」

そう言って再び走り出す背中を見送って思う。

彼をひまわりと呼ぶのは失礼かもしれないな。

こちらの呼びかけに応えてくれる彼は、ひまわりよりもずっと…









END


そんなわけでなんだかしり切れトンボなかんじになってしまいました。 
オマケにコレを書き上げたのは8/19とぎりぎりひまわりの季節。 
パソが復活してあげられるようになる頃にはひまわり終わってるんじゃ…。 
い、いや、細かいことは気にしてはいけないよお嬢さん(誰?) 

今回は大佐に「太陽になろう」って言わせたかったのです。 
でもなんか最初のテーマと話変わっちゃった。 
そんなこともあるよね!(逃) 
2004/8/19


めっきり寒くなってからの更新になってしまいました。  
上記のとおりひまわりの季節に更新したかったんですがねぇ。  
11月ってどうなんですか絢さん…。  
2004/11/04