第1話:『春は出会いの季節です。』後編
「さて、集合時間を過ぎたんだが…」
お茶を入れるための道具を洗い、カウンターの外にでてきたヒューズが言う。
先程の一騒動は中尉の笑顔でうやむやになった。
そのまま椅子に各々座り、テーブルの上のヒューズが用意してくれたケーキとお茶を楽しみながら、
エドはウインリィとリザに混じって仲良く談笑している。
因みにロイはエドと話したそうに度々視線を向けるのだが、
リザに一瞥され、エドには完全に無視されて大人しくコーヒーをすするしかなくなっている。
「そういえばヒーローは5人いるはずだな。もう一人がこないのか?」
一人蚊帳の外に出されていたロイがいち早く反応を返した。
「あぁ。そろそろ来るとは思うんだがな。ヤツはお前らと事情が違うからなぁ」
「事情?」
「そう、望んでヒーローやってないんだよ」
「望んでじゃないってどういうコト?」
いつの間にか談笑を中断してエドたちも話に加わってくる。
「お前ら4人しか希望する人間がいなかったんでな。
さっきのロイのセリフじゃないが、ヒーローは5人いるもんだっていうスポンサー側の意見でな、
一人推薦されて加わったやつなんだよ」
「推薦されるってことは強いんですか?」
「強いぜ。そっちの筋じゃ有名人だ。軍属だったお前らなら知ってるんじゃないか?エンヴィーってヤツだ」
その名前を聞いたとたんロイとリザの表情が変わる。
先ほどまでとは別人のような厳しい雰囲気を醸し出す二人の表情にエドは尋ねた。
「そんな表情をするってことは、なんかやばい人?」
その質問にはリザが答えた。
「えぇ。誰も彼の本当の姿を見たことが無いといわれている、裏稼業では有名な人物よ。軍では賞金もかけてるわ」
「軍の賞金首がヒーローに?」
ウインリィのもっともな質問にはヒューズが答える。
「確かに軍の賞金首ではあるが、ウチは軍とは関係ない独立した機関だからな。
この国の軍はたいした力がない上、ウチの上の機関と仲が悪いからなぁ。
軍が嫌っているような人物ならいっそこちらにとりこんで味方になってもらおうとかいうお上の魂胆だろうよ」
「へぇ」
ただ、と前置いてロイが言う。
「誰も本当の姿を見たことが無いというのは、変身能力に長けているからだとも言われるが、
実際のところヤツの姿を見て生きている人間がいないといった方が正確なんだよ」
エドとウィンリィが嫌な顔になる。つまり裏稼業というのは暗殺とかそういうものなわけだ。
「なんでそんな人間がヒーローなんかやる気になったんだ…?」
「おもしろそうだったから」
またもや突然声が聞こえた。
「あんたがエンヴィー?」
振り返ったエドが尋ねる。
「そうだよ。でもさ、後ろから突然声かけたんだからもう少し驚いてくれてもいいと思うんだけど」
期待はずれじゃん。とエンヴィーがぼやく。
「いや、だってこんだけウワサしてればそろそろくるかなぁと。で、どこから聞いてたの?」
皆一斉に同意を示す。どうやら誰も驚かなかったどころか、少し前から話を聞いていたことすら予想済みだったらしい。
「軍の賞金首がヒーローにあたりからかな。
にしてもさ、本人が聞いてるかもしれないって思ってるなら、もうちょっと遠慮してしゃべってもいいんじゃないの?」
もっともだ。しかしこれにもあっさりとした返答が返ってきた。
「悪口言ってたほうが早く来るっていうじゃん」
とエド。
「確かにね。全部本当のことだし、構わないけど」
こちらもあっさりと返事を返す。こうしてみていると裏家業の人間には見えない。
「じゃーいいじゃない。おもしろそうだったってヒーローが?」
「というよりはメンバーがかな。
このまま軍にいれば出世街道まっしぐらだった焔の大佐が参加するっていうし、
おまけにその大佐の元側近で護衛の中尉までいるらしいし。
金髪金目のおチビさんは好みだったし。ウィンリィだったっけ?君もかわいいよね」
「チビっていうなーっっ!!!!」
エドが爆発する。しかしその横でウインリィが低く呟くのを聞いて動きを止めた。
「そんなオマケのように褒められても…」
おまけに今の言い方だと確実にエドより下よね私…むかつく……エド…。
なにやらぶつぶつと呟いている。
もれ聞こえてくるところを聞いた限り、
自分がオマケのように褒められた悔しさはエドへの理不尽な怒りへと変化していったようだ。
「さっきのロイさんの扱いといい、今回といい、なんでみんな私よりエドのが扱いが上なのよ!」
「そんなこと言われても…」
「確かにアンタは私から見ても黙ってれば可愛いとは思うけど!」
「ちょっとまて、可愛いってなんだよ。可愛いって!それはオレがちっさいって意味か?」
「別に誰もそんなこと言ってないでしょー。被害妄想はいってるんじゃない!」
「なんだとっ!」
「なによっ!?だいたいあんたが小さいのは普段の食生活が悪いからでしょー!ちゃんと牛乳飲みなさいよ!」
「な、牛乳は今関係ないだろうが!!」
「好き嫌い言ってて大きくなれないのは自業自得なのに、そのことを気にしてるなんて被害妄想もいいとこだって話よ!」
「うるさい!だいたいさっきのアイツの扱いは俺にとっちゃむしろ不快でしかないんだよ!オマエいっそ代われよ!」
「無茶なこと言わないでよ!っていうか……!」
「――!」
「―――!!」
「――」
どんどん低レベルになっていく言い争いは止むことなく延々と続いていく。
喧嘩を始めた幼馴染二人の他にもう一組、一触即発の空気をまとった男たちがいた。
「エドが好みだというのは解る。かわいいからな。しかし、アレは私のものなのでね」
手を出さないでくれないか。そういって笑むロイははっきりとどす黒いオーラをまとっていた。
「へぇ。アンタのもんなんだ、おチビさん。そしたらアンタから奪うのも楽しいかもね」
エンヴィーがにやりと笑う。
「いや、別にロイのもんじゃないぞ。プロポーズは保留されてるしな」
横からヒューズが訂正する。
「ヒューズ!」
余計なことを言うなと睨むが、そこには面白そうにニヤニヤする顔。
「なんだ。焔の大佐、片思いなんじゃん。それならどっちが先におチビさんを手に入れられるか勝負でもしようか」
「ほう。この私に挑むというのかね。いい度胸だ」
「たいした自信だけど、それがいつまで続くか見ものだよね」
「そちらこそ、後悔するなよ」
「誰に向かって言ってるのさ」
「無論目の前にいる無謀な人物に向かってだが?」
「へぇ。15歳の少年にプロポーズするおっさんのほうがよっぽど無謀だと思うけど?」
「おっさんとは失礼だな」
「――」
「―――」
こちらの争いのほうが声を荒げたりしない分余計に手がつけられない。
というか、二人とも真剣すぎてどうしようもない…。
パァン…
突然の破裂音に口々に言い争っていた二組がぴたりと黙る。
そこには銃を天井に向けて立っているリザがいた。
「いいかげんにしなさい。話が進まないじゃない」
「はい。」
見事に全員がハモった。
そして全員の心の中で『この人にだけは逆らわないでおこう』と本能がささやいた。
「さて、それじゃあ改めて紹介するぞ。
まずはレッドからだな。エドワード・エルリック。コレでも錬金術師だ」
コレでもは余計だ。とエドが文句を言う。
「次はブルー、ロイ・マスタング。
さっきエンヴィーが言ってた『焔』の通り名のとおり焔を操る錬金術師で、オレの昔からの友人」
悪友だ。とロイもすかさず訂正をいれる。
「イエローが、ウィンリィ・ロックベル。
エドの幼馴染で機械鎧と医療をやってる。因みにエドの機械鎧はウィンリィ作なんだよな?」
うん。自信作なの。とウィンリィ。
「さて、お次はブラックだな。リザ・ホークアイ。
射撃の達人だ。ロイの護衛を勤めていただけあって腕はかなりのもんだ」
よろしく。と微笑む。
「んで、最後がホワイト、エンヴィーだ。
はっきり言ってホワイトは似合わないと思うんだが…」
自分でもそう思うけど、それしか空いてないって言われちゃしょうがないよね。
と苦笑する姿はやはり、とても元暗殺業の人間とは思えない。
「で、とりあえず、最後に俺がマース・ヒューズ。一応お前らの上司で、司令官だ」
よろしくな。といって笑う。
「因みにユニット名は『錬金戦隊☆ハガレンジャー』だ」
………。
「ナニそのハガレンジャーって…」
全員の疑問を代表してエドが聞く。
正直ダサいよ。とエンヴィー。他も相槌をうつ。
「俺もどうにかならんかとは思うが…。
『原作タイトルが鋼の錬金術師なんだからしょうがないじゃん。それしか思いつかなかったんだもん』ってよ。
はっきりいってなんのひねりも無く思いついたままのユニット名だということは想像がつくな。
おまけに錬金戦隊ってな…
(強制終了)
かくしてヒューズ司令官の下、5人のヒーローが集った。
異世界からの侵略者からこの世界を守るため、彼らは日夜闘い続ける。
行け!我らのハガレンジャー!
地球の平和は君たちに託された!
TO BE CONTINUED
→2話へ
そんなわけで、始まりました。
錬金戦隊☆ハガレンジャー(笑)
このだっさいタイトルがついている理由は本文の中でヒューズが言っている通りです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
この後、もう2、3話『自己紹介編』続きます。
出来るだけ早く更新したいと思いますのでよろしくお付き合いくださいませ。
第1話後編。
2004/7/17
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